学会概要

静電気学会は,静電気に関する研究者および技術者が一致協力し,既存の学問分野を越えた学際的な立場,また,国際的な視野から,静電気の学問と技術の進展に寄与することを目的に1976年10月12日設立された学会である。当初の執行部として,増田閃一会長,村崎憲雄・上田実両副会長が選出された。学会の運営は,設立当初から,会長,両副会長を中心に,理事の中から選出された約10名余の運営理事によって行われ,その後,業務遂行上新たに常務理事が設けられた。学会の運営は,設立以来,現在に至るまで会長をはじめとする理事,幹事のボランティアによって行われている。

静電気学会は2015年4月24日付で一般社団法人となり、移行期を経て2016年3月より新体制で運営を行っている。

会員資格は,静電気に関心のある研究者,技術者および団体と定められており,設立当初は,「古くて新しい静電気!」をキャッチフレーズとして参加を呼びかけ,個人会員約600名,賛助会員約70社で発足した。その後,20年余の間には,社会の変革に伴い,経済活動の停滞を招いたオイルショック,バブル経済の崩壊などの時期も含まれる。その経済不況の影響が学会にも及び,会員が減少するといった危機もあった。しかし,現在は,正会員・学生会員・外国会員約700名,賛助会員約100社に達し,小さな学会ながら順調な発展を遂げている。

学会の歩み

初代会長故増田閃一先生の構想を基本とし,大学あるいは公的研究機関に属する多くの先生方が役員として運営に参画してきた。学会の中核的な事業・活動である学会誌の刊行,全国大会(学術講演会)および研究会の開催などは,学会設立当初から毎年,毎回欠かさずに実施されている。

設立目的のひとつでもあった国際交流,国際貢献なども活発で,1984年「第2回電気集塵国際会議」を主催し,電気集じん技術の進歩に大きく貢献するとともに,その後も,海外で開催される数々の国際会議に積極的に協力・支援を行っている。1994年6月には,アメリカ静電気学会(Electrostatics Society of America)との共催によって「第1回日米ジョイントシンポジウム」を米国のスタンフォード大学で開催し,1996年東京大学,1998年スタンフォード大学,2000年京大会館,2002年ノースウェスタン大学と,2年毎に日本とアメリカ交互に開催している。ヨーロッパで開催される2つの静電気国際会議などにも協力するとともに,イギリス,ドイツ,オーストラリア,イタリア,デンマーク,ハンガリー,ポーランド,中国,韓国などとも国際交流がある。

対象分野

静電気工学に関する学術も進歩・拡大したため,学会の活動分野の面において大きく変貌している。学会設立当初の活動は,応用技術の面でも障害・災害防止技術の面でも,マクロテクノロジーが主体であった。しかし,最近は,バクテリアの殺菌,超微粒子・分子・電子の制御,あるいはきわめて微小な電荷・電荷分布の精密測定,静電マイクロマシンなど,マイクロテクノロジーとかマイクロユニットの調査研究が活動の中心になっている。また,環境改善技術に関する調査研究の面でも,電気集じん技術に代わって,放電プラズマによる有害物質の分解除去,脱臭など,学会として新しい方向性を打ち出し,現在は,工学の分野だけにとどまらず,生化学,医学,農学,放電化学など,種々の先端技術の分野も対象とした学会へと発展している。

学会活動

・学会誌の刊行

静電気学会誌は,学会と会員とのチャンネルであり,その発行は,学会活動の中核であるため,学会設立当初から『静電気学会誌』(英文タイトル:Proceedings of The Institute of Electrostatics Japan, 1999年よりJournal of The Institute of Electrostatics Japan に改名)を発行している。設立当初は,年4回の発行であったが,1980年からは年6回の隔月に発行することになり,今日に至っている。本誌の特徴は,静電気が学際的な学術分野であり,会員も多岐にわたっていることから,編集の基本思想として,解説に重点を置いていることで,そのために記事の構成も,解説約50%,論文約40%,会告約10%の比率になっている。また,解説は,会員へまとまりのある学術情報を提供することを目的に,各号とも特定の分野,専門的な課題,トピックスなどに焦点を絞った特集号的な編集が行われている。また,内外の会員からの学会への提言,活動状況に関するメッセージなどを求め,会員との交流も図っている。

・学術講演会の開催

全国大会は,会員の研究成果の発表と意見交換および相互交流を目的として,毎年8月末〜10月初旬の間に,2〜3日間開催している。開催地は,原則として,東京とそれ以外の都市との交互開催としているが,東京以外での開催要望も多く,過去20年余の間には,北海道,東北,信州,東海,北陸,中国,四国,九州などの各都市,大学などにおいて開催している。 全国大会では,会員の研究成果の発表である一般講演のほか,特別講演として,内外の有識者から最新の学術,トピックス,各地の文化などについての講演を,また,東京開催のときには,製品,静電気材料などの技術展示会も開催している。講演件数は,学会発足当時,一般講演と特別講演をあわせて約70件程度であったが,最近は約100件以上となり,その講演の内容をまとめた『静電気学会講演論文集』は毎年400ページを超える程度である。

・研究会の開催

研究会は,設立当初,基礎学術の解説,新技術の紹介,内外の研究成果などの情報提供および研究成果の発表と討論を目的に,全会員が自由に参加できるオープンシステムで開催していた。この研究会は,現在も年間数回開催しているが,1982年から特定の課題を対象に調査研究をする委員から構成される研究委員会を設け,毎年,その成果を学会誌,オープンシステムの研究会などにおいて発表している。後者の研究会は,3〜5年間で成果を達成することにしており,現在までに取り上げられた調査研究は,静電気の基礎理論,電気集じん技術,電界応用技術,静電気測定技術,液体の帯電現象,粉体の帯電現象,静電気障害・災害防止技術,電子システムの静電気耐性向上技術,放電プラズマによる大気の環境改善技術等々,広範な分野にわたって実施されている。

・シンポジウムの開催

シンポジウムは,主として国際交流,ほかの学会との交流,静電気研究の高度化を目的として開催されており,海外の研究者を招聘して開催する特別シンポジウムをはじめ,静電気学会と関連した調査研究を行っている他学会との共催により,特定の課題を対象とした研究成果についてのシンポジウムを開催し,調査研究の広範な相互交流を図っている。

・学会賞の授与

学会賞は,静電気に関する学問・技術などの発展へ顕著な功績,あるいは社会的に大きな貢献をなされた個人あるいは団体を讃えることが目的であり,それぞれの秀でた業績に応じて設けられている 功績賞,進歩賞,論文賞,著作賞,会長賞,技術賞、増田賞、トレック賞、宍戸奨励賞、HRSB賞を,毎年,全国大会のときに開催される表彰式において授与している。

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